スリー・ビルボード

大傑作だった。ぎりぎりの緊張を保ちつつ含蓄に富む脚本。魅力的なキャラクター設定と台詞を活かしきる素晴らしい演技。いまどき120分を切るタイトな編集。せつなくも美しい音楽。一緒にみた友人も言ってたけど、ほんとうに映画として1秒も無駄なところがない。見事な仕上がりだったと思う。今夜(というか明朝か)のアカデミー賞でも作品賞、脚本賞はこちらじゃないかなあ。

あと主演女優賞もフランシス・マクドーマンドだろうなあ。というかマクドーマンドにあげてほしい。「シェイプ・オブ・ウォーター」のサリー・ホーキンスも本当に素晴らしい演技で、それこそ体張りまくってて、報われてほしいと思うんだけど、それでもマクドーマンドの圧倒的な説得力に触れてしまうと、、、

とにかくこの映画、マクドーマンド演じた母親を筆頭に、みんなみんなやることなすことめちゃくちゃで、法的にはもちろん、倫理的にも間違ってて、性格的にも大変めんどくさいひとたちで、、、安易に共感したり、寄り添ったりすることはできない。しかし映画が進むごとに、事態が進行するごとに、なぜかみんなのことが愛おしくてたまらなくなってしまう。失敗を繰り返しながら、人を傷つけながら、自分を傷つけながら、それでも「ストーリー」は進んでいく。でもそれって、僕たちの人生そのものじゃないか!!

なんて豊かな映画(人生)なんだろう。なんて美しい映画(人生)なんだろう。登場人物たちの言動、行動に困惑しながらも何度もそう思った。わかりやすく号泣するとか、そんなチンケな映画じゃないんだけど、観ながらぐっと込み上げてくるものがあった。そしてあの鮮やかなラストシーン!!見事。見事としかいいようがない。

あのオレンジジュースのシーンはきっと映画史に残るだろう。