シェイプ・オブ・ウォーター

僕らのデルトロの最新作。SF・ファンタジー系では異例のアカデミー賞最多ノミネートというこれ以上ない前評判。期待半分、不安半分だったけど、なるほどギレルモ・デル・トロの真骨頂というか、これまでのキャリアの集大成と呼べる作品に仕上がっていたと思う。

ギレルモがなにか好きか、もわかりやすいんだけど、それ以上に何が嫌いなのかが良くわかる笑。元軍人でマッチョでキャデラックとか乗ってるやつ、ほんとに嫌いなんだなーって。

それとは対照的にゲイの画家、言語障害の女性、黒人、そして異形のクリーチャー。社会のなかで抑圧されている人たちには惜しみない愛情が注がれる。しかも今回は、シェイクスピアでもかくやというほどの、どストレートな「愛」の物語に昇華させている。あまりにもストレートで、ひょっとするとひねくれたサブカル勢からは「日和りやがって」的な評価もあがりそうな気もするけど、、、まあでも純粋に美しいからね。僕はこれはこれで傑作だと思いますよ。

児童文学みたいなメタファーの数々がとても好き。前述のキャデラック野郎の指が腐っていくところとか。主人公側のひとたちも決して聖人じゃないあたりもいかにもデルトロ調でいいと思う。オープニングがいきなりオナニーシーンだもんね。デルトロ、これまで直接的に性的な描写ってあまりなかったと思うけど、ここまでストレートに「愛」を描くからには「性」からも逃げられないと思ったんだろうね。誠実だよね。ほんとに。

実は翌日にはアカデミー賞でライバルになっている「スリー・ビルボード」を観ていて、そちらが近年稀にみる大大傑作!!だったので作品賞はぜひとも「スリー・ビルボード」にと思っているんだけど、監督賞はデルトロにあげてほしいなーと思います。いつも思うけど、彼は本気で「映画」のマジックを信じているんだと思う。おそらくは彼自身が「映画」に救われてきた人で、自分と同じように社会のなかにうまく馴染めずにいる人たちを「映画」の力で救いたいと思っているんだと思う。これほどストレートに「映画」を愛している監督が他にいるだろうか。その衒いのない愛情に尊敬を込めて。

デルトロさん!!今回もよかったよ!!すっげえよかった!!