ダムタイプ「S/N」

ひとつ前に「六本木クロッシング」全体のことを書いてますが、この展覧会で一番うれしかったのが、ダムタイプの「S/N」を(やっとこさ)観れたこと。すいません。実はこれまで、とっくに観たような顔をしてました(恥。。)

作品がつくられたのは1992年。まだメディア・アートという言葉も定着していなかったころ。その頃にあれだけのアイデアと意欲をつぎこんだ作品が生まれたのは一種の奇跡だと思う。音楽、トーク、ビデオ、美術、ありとあらゆる表現形態を詰め込んだ舞台は、今みても十分に刺激的。

そして舞台全体を圧倒的に支配しているのは、やはり故・古橋悌二さんの圧倒的な存在感だ。

作品が「同性愛」「AIDS」をテーマしているということもある。しかしそれだけでもないと思う。実はついさきほど、古橋さんのことを知人と話していたのだが、その人は言葉に対するセンスと表現していた。なるほど、それだ。あの舞台を特別なものにしているのは、古橋さん独自の、鋭利な言葉のセンスだと思う。

今日、ダムタイプのことを仕事で調べる必要があって、そこで偶然見つけたインタビュー。

「人間は本質的な深刻の只中にいる時、泣いたり、笑ったり、怒ったり、走ったり、抱きしめたり、一緒に踊ったりというようなとても単純な反応しかできないものだと知りました。科学も議論もゲームに過ぎないんです」
http://www.dnp.co.jp/museum/nmp/nmp_j/review/0615/insta0615.html

これはなかなか言えるもんじゃない。わずか35歳で急逝することとなった天才・古橋さん、そのセンスの鋭利さはいまでもヒリヒリと観るものにせまってくる。

しかし京都ってのはすごいっすね。ダムタイプが活動を始めたのは1984年らしいが、それってローザ・ルクセンブルグが活動をはじめた年とも重なっている。古橋さん、どんと、とんでもない才能を持った人が同時期に京都の大学にいたってことだ。ダムタイプに集結していた人には今も現代アートの最前線にいる人がたくさんいる。東京でも、これほどの才能が同時期に、同じ場所で活動してたことってないんじゃないかな。

「S/N」はDVDでも販売されているはず。未見の人はぜひご覧になってみてはいかがでしょうか(と、ついこの前まで自分も未見だったくせに偉そうに言ってみる^^)