18倫 アイドルを探せ

毎度おなじみLOVE CINEMA SHOWCASE。今回の特集は城定秀夫さん。これまでの特集でも何本か見たことがあるけど、とても青臭く、シンプルな「ドラマ」を撮る人というイメージがあった。SPOTTED曰く、叙情派。

で、この作品もまた城定節全開。特に登場人物、キャラクターのつくりこみは素晴らしかった。

物語の主人公、倫子は、そんなやつはいねえんだってぐらい意味の分からない金持ちのお嬢さんで、実家が破綻してホームレスになって、AV制作プロダクションに住み込みで務めることになって・・・みたいなストーリー。最初はとっつきにくいったらありゃしない(笑)。「〜でございますわ〜」とかやたらとハイテンションで田代さやかがお嬢っぷりをアピールしてるんだけど、なんぼコメディたって違和感ありすぎだろーみたいなね。しかも持田茜が同じくお嬢キャラで登場して、もう何が何だか頭が痛くなるというか・・・苦笑

しかし映画が進むにつれ、この二人、さらには二人を取り囲むほかのキャラクターまでもがとてつもなく魅力的に見えてくるから不思議。これはもう映画のマジックだ。

デジタルカメラで撮られた画像はお世辞にも映画的スペクタクルを備えたものではない。明らかに安っぽい。でもその安っぽいカメラが捉えるキャラクターたちが与えてくれるカタルシスは、全く安っぽくないのだ。まさに映画。映画にしかない感動がちゃんとある。

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この日は上映後に城定監督と切通理作さん、それに「サイタマノラッパー」の入江監督のトークショーがあった。それでも客席にいたのは15人程度(明らかに関係者と思われる人含む笑)。寂しい客入りといえばその通りなんだけど、だからこそと思われる濃密なトークはとても良かった。

長回しとカット割をどう使い分けるか、同じ長回しでも役者がカメラに背を向けるのはダメ、じゃあそうならないためはどう演出し、どうカメラを動かせばいいのか、、、ここは映画学校ですかってぐらい濃密なテクニカル談義も楽しかったが、城定さんが「僕は映画監督という職業に就きたかった」とおっしゃっていたのは強く印象に残った。

ひとくちにプログラムピクチャーといっても、入江さんのようにインディーズでつくるのと、城定さんのようにVシネでつくるのでは大きな違いがある。インディーズの動機はある意味分かりやすい。誰からも制約を受けないため。自己表現にこだわるため。彼らはインディーズで撮ることを選択する。

ではVシネの世界にいる城定監督のモチベーションは何か。たったの1000円で売られるDVD。特集上映でさえ15人しか客が入らない映画。それなのに販売元からの制約はとても多い。城定さんはなぜそんな条件で撮り続けることができるのか。

そこで城定さんが言った言葉が上の「僕は・・・」というもので、でもその控え目な言葉からは、溢れんばかりの映画愛と、映画職人としてのプライドが見て取れた。映画愛とかいっちゃうとそれはあくまでも「自己表現」にこだわる人(例えば入江さんのような人)に与えられる言葉として捉えられがちだが、実際にはさまざまな映画愛がありうる。城定さんには城定さんの、「職人」としての映画愛が溢れている。

トークショーの端々に現れる城定さんの厳しい言葉(某作品の脚本について、ダブルクレジットにはしてあるけど、あれは元々それを書いてきた奴の文は一行も残さなかった、あんなもん書いてきやがって・・・とか)には職人としてのプライドが満ち満ちていた。たとえ予算がなくても、たとえ撮影日数が短くても、どれだけ機材がしょぼくても、城定さんはもてる限りの知恵と工夫を総動員し、観る人に喜びを、映画にしかないカタルシスを与えようとし続けている。そのばかばかしいまでの真摯さ!!僕がいつもピンク映画をみて心から感動するのは、そうした真面目さ、表現することへの欲求の高さが息苦しいまでに伝わってくるからだ。

僕はよく「ピンク映画を観ると癒される」と言う。でもそれは、ほんとうにいいたいことを微妙にごまかしながら言っている。もちろんエロシーンはピンク映画の醍醐味。ちゃんとエロくあってほしいし、そこで癒されるところもある。でもそれ以上に大事なのことが、上に書いたような表現に対する真摯な欲求に触れることなんだよね。

もっと簡単にいえば貧乏人が精一杯の工夫を凝らして「映画」を撮ろうとしてる姿にぐっとくるというのかな。金持ちシネとか、イケメンぶっころすとか、ツルンとしたオシャレ小僧なんてダイッキライだ!とか、そういう卑屈モード全開で生きてきた僕としては、こういう貧乏人のがんばりには深く深く共振してしまうわけですよ(なんと因果な!)。

城定監督が好きな監督として岡本喜八さんを上げてたのも(入江さんがそういってたけど)納得だったな。城定さんは「難しい映画」は嫌いなのだそうで、分かりやすい映画、伝わりやすい映画をつくりたいのだそうだ。技巧派ってことも含めて岡本さんの影響といわれるとなるほどなと思う。四天王時代とかにありがちなアヴァンギャルドさって、城定さんには皆無だもんな。

そんなポップ志向なところも含めて、城定さんのバランス感覚は素晴らしいと思います。ピンク初心者にも観やすい作風だと思いますので、興味のある方は劇場に足を運んでみてはいかがでしょうか。私はオススメですよ。